ベクトル空間
関数解析の前提知識としてのユークリッド空間上のベクトル空間をまとめる。集合の元同士の加法と集合の元のスカラー倍を定義してベクトル空間が構成される。
関数解析のひとつの目標であるヒルベルト空間とは、元々3次元ユークリッド空間の拡張と抽象化なので、ユークリッド空間と似たような性質が成り立つ。
そこで、まずはユークリッド空間で成り立つ性質について整理する。
スカラーは実数体の元である(ここで体とは有理数全体や実数全体のように四則演算が自由にできる数の集合を指す)。
実数体上のベクトル空間
Xにおける線形演算:「Xの任意の2つのベクトルの加算」と「Xの任意のベクトルにRの元(スカラー)をかけるスカラー倍演算」が以下を満たすとき、集合XをR上のベクトル空間という。
1. 可換群の公理:任意の$\bf{x},\bf{y} \in X$に対して、和と呼ばれるもの$\bf{x}+\bf{y}$がXの元として存在し、任意の$\bf{x},\bf{y},\bf{z} \in X$に対して以下が成立。
1.1 結合則1 $(\bf{x}+\bf{y})+\bf{z} = \bf{x} + (\bf{y}+\bf{z})$
1.2 可換則 $\bf{x}+\bf{y} = \bf{y}+\bf{x}$
1.3 加法単位元の存在 すべての$\bf{x} \in X$に対して、$\bf{0}+\bf{x}=\bf{x}$となる共通の元$\bf{0} \in X$が存在
2. スカラー倍演算の公理:任意の$\alpha \in \mathbb{R}$と$\bf{x} \in X$に対してスカラー倍と呼ばれるもの$\alpha \bf{x}$がXの元として存在し、任意の$\alpha, \beta \in \mathbb{R}$と$\bf{x},\bf{y} \in X$に対して以下が成立。
2.1 分配則1 $\alpha(\bf{x}+\bf{y})=\alpha\bf{x}+\alpha\bf{y}$
2.2 分配則2 $(\alpha+\beta)\bf{x}=\alpha\bf{x}+\beta\bf{x}$
2.3 結合則2 $\alpha(\beta \bf{x})=(\alpha\beta)\bf{x}$
2.4 スカラー倍演算の単位元の存在 すべての$\bf{x} \in X$に対して、$1\bf{x}=\bf{x}$となる元$1$が存在